楽章を取っ払ってしまった ― 自由な即興性を窺えながらも全体が密なつながりを持つソナタを聴き比べる。

本日のOp27-1は、昨日紹介した「ピアノ・ソナタ第12番 Op.26《葬送》」から引き続き、実験的な表現で作曲された作品。出版の際につけられた正式名称は「幻想風ソナタ」です。
初めての交響曲や弦楽四重奏曲で大きな成功を収めることになるこの時期、ピアノ・ソナタではさらなる新しい表現様式を求めてさまざまな実験的革新が試みられる。この時期の最大の特徴はソナタ形式による第1楽章を回避することである。
《葬送》Op.26では第1楽章に変奏曲を置くなどして、古典的なソナタ形式からの脱却をはかっていましたが、Op.27では従来のソナタとはさらに違う作風になっています。
通常、楽章と楽章の間は一呼吸おいて演奏されるのが一般的ですが、この作品ではアタッカ(間を置かずに)で演奏されます。作品27-1は「変ホ長調」で4楽章構成をとり、全体に緩・急・緩のコントラストを志向しているが、第1楽章の内部構造も緩・急・緩の三部分で、さらに両端のアンダンテ部も小さな三部構成をとっている。全体に自由な即興性も窺える。
Op27は2曲ともそうして書かれているのですが、全楽章がアタッカでつながっているなど、より一層全体が密なつながりをもっています。
モーツァルトのソナタや協奏曲は、第1楽章で重要なテーマを展開させると、緩徐楽章はロマンス、軽快なロンド形式の終楽章で締めくくりますが、ベートーヴェンはここに至って、終楽章に比重が置かれるという構成は、次の『月光ソナタ』でより一層発展していきます。