コロナ禍の心の隙間を宥めるカラヤンの演奏の名曲を聴く 第26盤 バッハ 管弦楽組曲
今必要なのは「みんなで楽しめる楽曲」ではなく、「一人ひとりに寄り添う楽曲」
独奏フルートが華やかに活躍する組曲第2番、有名な『G線上のアリア』の原曲であるアリアを含む第3番。ヨーロッパ各地に起源を持つ様々な舞曲を組み合わせたバッハの管弦楽組曲2曲。管弦楽組曲は、フランスの宮廷作曲家リュリを始祖とする「フランス風序曲」に、ドイツの伝統的な舞踏音楽を融合させたものです。ともすれば虚飾に陥りがちな宮廷音楽に民衆の中で発展してきた舞踏音楽を取り入れることで新たな生命力をそそぎ込み、同時に民衆レベルの舞踏音楽にも芸術的洗練をもたらしました。
第2番は、パセティックな雰囲気が支配する序曲と、フルート協奏曲といっていいような後半部分から成り立ちます。終曲は「冗談」という標題が示すように民衆のバカ騒ぎを思わせる底抜けの明るさで作品を閉じます。
第3番の序曲に「着飾った人々の行列が広い階段を下りてくる姿が目に浮かぶようだ」と語ったのがゲーテです。また、第2曲の「エア」はバッハの全作品の中でも最も有名なものの一つでしょう。
ヨーロッパにおける様々な音楽潮流がバッハという一人の人間のもとに流れ込み、そこで新たな生命力と形式を付加されて再び外へ流れ出していく様を、この二つのオーケストラ作品は私たちにハッキリと見せてくれます。1964年8月14~24日、スイス・サンモリッツ、ヴィクトリア・ザールでの収録。ザルツブルク音楽祭の合間をぬって、カラヤンとベルリン・フィルのメンバーがスイスの避暑地サンモリッツで録音したアルバム。通奏低音のチェンバロを担当しているのはドイツの女流名手エディット・ピヒト=アクセンフェルト、組曲第2番のフルート独奏は当時のベルリン・フィル首席奏者のカールハインツ・ツェラーと、名手たちによる共演が楽しめる。ロマンティックで流麗、堂々としたバッハだ。
これらのバロック音楽はカラヤンが夏休みにベルリン・フィルをサンモリッツに招待し、そこで録音したもの。昼間は大自然の山を歩いたり、湖で楽しんだりし、夜に録音。雨が降ってたら昼間の録音という最高な環境下での収録だったと当時を振り返る楽員の回想録があります。
なお、カラヤンはこの後映像作品としても「ブランデンブルグ協奏曲」を取り上げているのですが、そこでは自らがハープシコードを演奏しながら指揮をしていました。しかし、この64年から65年にかけてのサンモリッツでのバッハ、ヘンデル録音では、ハープシコードはアクセンフェルトに任せて、自らは指揮に専念しています。このあたりの使い分けが「格好つけ」として嫌われる要因になっているのかもしれません。
劇的起伏豊かで緩急も自由自在であり、カラヤンの卓越した棒さばきによる華麗で明朗なるバッハを堪能できる。モダン楽器による大バッハの作品演奏としては一つの到達点に達した名演だと思える。イギリスの批評家リチャード・オズボーンは「歓びと力にあふれた、素晴らしいバッハ」「いまなお聴く者を楽しませている」と評価している。
第2番は、パセティックな雰囲気が支配する序曲と、フルート協奏曲といっていいような後半部分から成り立ちます。終曲は「冗談」という標題が示すように民衆のバカ騒ぎを思わせる底抜けの明るさで作品を閉じます。
第3番の序曲に「着飾った人々の行列が広い階段を下りてくる姿が目に浮かぶようだ」と語ったのがゲーテです。また、第2曲の「エア」はバッハの全作品の中でも最も有名なものの一つでしょう。
ヨーロッパにおける様々な音楽潮流がバッハという一人の人間のもとに流れ込み、そこで新たな生命力と形式を付加されて再び外へ流れ出していく様を、この二つのオーケストラ作品は私たちにハッキリと見せてくれます。1964年8月14~24日、スイス・サンモリッツ、ヴィクトリア・ザールでの収録。ザルツブルク音楽祭の合間をぬって、カラヤンとベルリン・フィルのメンバーがスイスの避暑地サンモリッツで録音したアルバム。通奏低音のチェンバロを担当しているのはドイツの女流名手エディット・ピヒト=アクセンフェルト、組曲第2番のフルート独奏は当時のベルリン・フィル首席奏者のカールハインツ・ツェラーと、名手たちによる共演が楽しめる。ロマンティックで流麗、堂々としたバッハだ。
これらのバロック音楽はカラヤンが夏休みにベルリン・フィルをサンモリッツに招待し、そこで録音したもの。昼間は大自然の山を歩いたり、湖で楽しんだりし、夜に録音。雨が降ってたら昼間の録音という最高な環境下での収録だったと当時を振り返る楽員の回想録があります。
なお、カラヤンはこの後映像作品としても「ブランデンブルグ協奏曲」を取り上げているのですが、そこでは自らがハープシコードを演奏しながら指揮をしていました。しかし、この64年から65年にかけてのサンモリッツでのバッハ、ヘンデル録音では、ハープシコードはアクセンフェルトに任せて、自らは指揮に専念しています。このあたりの使い分けが「格好つけ」として嫌われる要因になっているのかもしれません。
劇的起伏豊かで緩急も自由自在であり、カラヤンの卓越した棒さばきによる華麗で明朗なるバッハを堪能できる。モダン楽器による大バッハの作品演奏としては一つの到達点に達した名演だと思える。イギリスの批評家リチャード・オズボーンは「歓びと力にあふれた、素晴らしいバッハ」「いまなお聴く者を楽しませている」と評価している。
